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第65回全日本合唱コンクール東北大会

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2013年9月27日(金)9:45/仙台イズミティ21

 今年も東北大会を聴く為、遥々と仙台までやって来た。表彰式も終えて会場を後にする際、今日は妙に終演時間が早いなぁと気付く。それも道理で、青森・秋田・山形・宮城の四県が、昨年より各一校づつ代表校を減らしている。コンクールは比例代表制なので、今年は県予選への参加校自体が軒並み減った事になる。裾野の広がらねば、頂点のレヴェルも下がる。事実、嘗ての全国大会常連校だった、鶴岡南や秋田北の名前は今日のプログラムに無いし、仙台三桜は部員数を半減させている。これは顧問教諭の交代に伴う一時的な現象なのか、或いは合唱の部活自体の不人気の現われか。その要因は一律に論じられないにせよ、果たして参加校や部員数の減少に歯止めは掛かるのか、今後の推移を見守るしかない。

<青森県>
県立八戸東高校音楽部(女声30名)
指揮/原子こづえ
モラレス「In die tribulationis 我が苦難の日に」
Xabier Sarasola:Veni creator spiritus
Antonio M.Russo:Venite exsultemus Domino
 モラレスは生徒の理解度の高い、上質なポリフォニーの演奏。フォルテに透明な音色のある頭声で、各声部を美しく処理出来ているし、山場の作り方も巧い。ただ、声に芯の感じられず、ピアニシモではテンションが下がり、半透明な音色でやや不安定になる。自由曲もとても美しいが、メゾが嵌まらず不協和なハーモニーをピタリと決められない。最後はホモフォニックに速いテンポの曲で、フォルテでは美しく纏まるが、このハーモニーをピアニシモでも維持したい処だ。更に演奏の質を高める為、ヴォイス・トレーニングは必須と思う。

県立青森高校音楽部(混声20名)
指揮/熊澤愛理
コープランド「Have mercy on us, O my Lord 主よ憐れみ給え」(四つのモテット)
三善晃「私が歌う理由」(地球へのバラード)
 コープランドは伸ばす声が真っ直ぐそのままで、音楽に膨らみの欠けるので、もっとデュナーミクを粒立たせたい。三善も軽快なテンポ感でスマートな演奏だが、もっとデュナーミクに工夫を凝らし、内声的な音色のあるソプラノから情感を引き出して欲しい。そうでないと、この曲の内容の深さは表現出来ない筈だ。

県立五所川原高校音楽部(女声13名)
指揮/今敦子
モラレス「In die tribulationis 我が苦難の日に」
ハヴィエル・ブスト「Zai itxoiten 待望」
ミクロシュ・コチャール「O havas erdo nemasaga 雪の森の静寂」
 モラレスはソプラノの強過ぎてバランスを崩すので、もっと各パートの音色をクッキリ際立たせたい。それと何か途中で変化を付けて貰わないと、聴かされる方は退屈する。自由曲でのテクニックはそれなりに高いし、色々工夫しているのも分かるが、やはり音色の変化が無い。内容に乏しい曲の所為もあり、聴いていてちっとも面白くない。最後の聴き慣れた曲にもモノクロームな色しか無いので、まずハーモニーの色彩感に付いて考えて欲しい。

<秋田県>
県立秋田高校合唱部(混声17名)
指揮/吉原東吾
ヴィクトリア「O magnum mysterium 大いなる神秘」
Ola Gjeilo:Ubi caritas/Prelude
 ヴィクトリアは少人数にしては遅目のテンポ設定で、男声の引き摺るようなリズム感が気になる。グレゴリオ聖歌を基として素朴に作られた自由曲は、声の技術は拙くとも縦のフレージングをピタリと揃え、なかなか滋味深く聴かせてくれる。身の丈に合った選曲で、持てる実力を精一杯に発揮していた。

県立大曲高校合唱部(混声13名)
指揮/鈴木智美
鈴木憲夫「どうしてだろうと」(地球ばんざい)
Ola Gjeilo:Ubi caritas/Prelude
 三名の男声で四声曲を演奏する蛮勇は買うが、もう少し速目のテンポでテキパキやらないと、この少人数では音楽自体ダレて終う。自由曲は二曲に対比を付けた積もりだろうが、やはりテンポが遅過ぎるし、もっとダイナミズムの変化をハッキリさせたい。終始イン・テンポでは困るので、アゴーギグを揺らせるなど何かしらの工夫も望まれる。

聖霊女子短大付属高校合唱部(女声33名)
指揮/石崎巴
ピアノ/土田那津子
高嶋みどり「きょうの陽に」(明日のりんご)
Janos Vajda:Kyrie/Gloria〜Missa in D
 課題曲は素直に歌えているが、倍音の膨らみに欠ける単彩な声で、表現力に乏しくなる。可愛らしい声でのミサ曲も、響きは痩せ細っているし表現の幅も狭いが、こちらは清楚で悪くないと思う。

<山形県>
県立鶴岡中央高校合唱部(女声20名)
指揮/松本光治
ピアノ/阿蘇路
池辺晋一郎「雨の犬」(この世界のぜんぶ)
信長貴富「風のような歌は」(風のこだま・歌のゆくえ)
 池辺ではソプラノに深い音色があり、その声を有効に使うセンシティヴな音楽作りがある。但し、もう少し音色を変化させないと、単調になる嫌いはある。自由曲ではガラリと声を変え、多彩な色を使えている。とても上手な演奏だが、曲自体の内容に乏しい為、幾ら熱演しても伝わるものは少なく、もっとアザトいデフォルメは必要と思う。

羽黒高校合唱部(女声26名)
指揮/春山連
ヴィクトリア「O magnum mysterium 大いなる神秘」
エリック・ウィテカー「I will wade out/Hope,faith,life,love」
 ヴィクトリアは最後のアレルヤをリタルダントする前に、軽くアチェルラントすれば効果的な筈だ。完全に縦割りのホモフォニックな解釈で、自由曲も声に力の無い割りにテンポが遅過ぎる。人数分のフォルテは出るし熱演ではあるが、そこで汚い声になるのと、ピアニシモで声の途切れるのは頂けない。パート・ソロで非力を露呈するので、対位法的な曲は避けた方が良いように思う。

県立山形西高校音楽部(女声69名)
指揮/吉田朋世
ピアノ/郷津由紀子
高嶋みどり「きょうの陽に」(明日のりんご)
鈴木輝昭「会う‐手紙‐川」(女に第2集)
 中音域に成熟した声質はあるが、フォルテと高音部を歌い切る技術に欠け、課題曲ではややアラが聴こえて来る。リズムの複雑な自由曲なので、まずパート内部の音程をキッチリと揃えた上で、もっと厳しくリズムを律して音楽を進めて欲しい。

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