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第65回福島県合唱コンクール

2011年8月26日(金)9:30/会津風雅堂

<郡山市>
県立郡山高校(混声52名)
指揮/菅野正美
ピアノ/鈴木あずさ
高嶋みどり「父の唄」(若者たちの悲歌)
鈴木輝昭「木/水」(五つのエレメント)
 全体に小じんまりと纏めた演奏だが、課題曲の対位法的な構造は良く把握出来ている。自由曲でソプラノは柔らかくスピントする上に、ソット・ヴォーチェの上手で、フォルテで絶叫にならない女声の声楽テクニックは高い。デュナーミクの作り方を曲の無機的な情感に合わせて、この指揮者の通例である情感過多の傾向の無いのも好ましく、ソフトで明晰な子音の発音で言葉も良く分かるが、もう少しダイナミク・レンジを広げ、より立体的な演奏の望まれる。

県立郡山東高校(混声21名)
指揮/小林悟
ヤコブ・ファート「O quam gloriosum est regnum 栄光に輝く王国」
ジャヌカン「La Guerre マリニャンの戦い」
 課題曲の跳ねるリズムに違和感はあるが、ポリフォニックな構築は良く出来ているし、後半のテンポ・アップも正解。ただ、本来はレガートにやるべきで、この指揮者はシャンソンのリズムで宗教曲を処理しているように思う。ジャヌカンはとても良く歌えたが、これはもっとソフィストケイトされた音楽なのに、曲の前半の表現は生っぽく過ぎる。中間部の擬音のオノマトペと明快な対比を作りたいし、全体にテンポを弄り過ぎで、ルネサンス・シャンソンの愉悦感は出て来ない。ここの顧問教諭には様式感の無いと思うが、当然に聴いているであろうドミニク・ヴィスの録音の真似をせず、独自の解釈を貫くのは、それはそれで評価すべきと思う。

県立安積黎明高校(男声8名)
指揮/宍戸真市
モーツァルト「Dir,seele des weltalls 汝は宇宙の魂に」K.429
シューベルト「Die nacht 夜」
 課題曲はパパゲーノのアリアみたいで、ダブル・カルテットが半円で指揮者を囲み、先生も歌っているように見えるのは、なかなか楽しそう。シューベルトは歯切れの良いリズムで、不協和なハーモニーも表現として良くこなした。ただ、これは言っても詮無いが、トップの籠もり気味の声は何とかして欲しかった。

郡山女子大附属高校(女声32名)
指揮/榊枝まゆ美
ピアノ/横溝聡子
土田豊貴「けれども大地は…」(夢のうちそと)
鈴木輝昭「宇宙の滴りをうけて」(譚詩頌五花)
 課題曲のピアニシモのテンションは高いが、そこでピッチの合わずに和音の揺れるのはキズになる。自由曲に高度な声のテクニックはあるし、曲想に合わせた表情の変化もあるが、終始同じようなテンションの続いて、音量を増減させるだけの曲作りはやや単調。音色の変化に乏しいのも、音楽の表現を一面的にして終った。

県立郡山東高校(女声31名)
指揮/小林悟
土田豊貴「けれども大地は…」(夢のうちそと)
信長貴富「春の苑/天の火/山茶花」(万葉恋歌)
 遅いテンポで曲の構造を明示し、ダイナミズムの変化とテンションの移動で聴かせる、指揮者の音楽性にフィットした課題曲と思う。自由曲はハーモニーの色合いと、声の音色の変化を絡ませたカラフルな演奏。テンポの遅いのは、その辺りの変化に注意深く耳を澄ませ、ジックリと聴かせる姿勢のあるからと分かる。この指揮者は、このテのネッチョリした曲をやらせると上手で、僕でも結構楽しく聴けた。

県立安積高校(混声33名)
指揮/鈴木和明
ヤコブ・ファート「O quam gloriosum est regnum 栄光に輝く王国」
Ryan Cayabyab:Aba po,Santa Mariang reyna
 課題曲はハーモニー重視の為に団子気味となるので、もっとポリフォニーの線を出したい。何語の曲かも分からない自由曲だが、指揮者の全体を見通したアーティキュレーションの作り方の上手で、定石を外したコード進行の曲から、美しい響きを引き出している。柔らかい声のテノールと、しっかりした高音を出せるソプラノは、フォルテシモで力のある処も聴かせてくれた。

県立安積黎明高校(女声46名)
指揮/宍戸真市
土田豊貴「けれども大地は…」(夢のうちそと)
鈴木輝昭「夜曲-木魂の薔薇」(妖精の距離)
 課題曲はスピントするフォルテシモで力のある処を聴かせるが、ピアニシモでフラついたり、細部の彫琢まで手の回っていない印象を受ける。一体何声にまで分かれるのか、前半の対位法的な部分の処理は声に力のあり、個人レヴェルの技量で聴かせる。指揮者の分析の手付きは精密だが、中間部のホモフォニックな曲想に、もう一歩の工夫は欲しかった。

県立安積高校(女声17名)
指揮/鈴木和明
スヴェーリンク「Lascia Filli mia cara 愛するフィリスよ」
ラヨシュ・バルドシュ「Magos a rutafa 大きなルタの木」
 ロマンティックな情感を込めたスヴェーリンクだが、曲中のテンポの切り替えの上手なのと、ポリフォニーの処理も良く出来て美しい演奏だった。バルドシュは独特な柔らかい音色のあるソプラノへ、深いアルトのブレンドされた美しいハーモニーがあり、技巧的なデュナーミクの工夫と、何よりも指揮者の個性的なセンスで聴かせた。

県立安積高校(男声15名)
指揮/鈴木和明
高田三郎「冬・風蓮湖」
千原英喜「岡崎五万石/東照公遺訓」(東海道中膝栗毛)
 課題曲に男声らしい倍音の効いたハーモニーはあるが、フォルテを出し切る声の力に欠けるのは、やや物足りない。自由曲でのハモり具合も、やはり男声アカペラは一味違うと感激する。もう少しトップにスコーンと出せる力のあると、更にバランスは良くなるが、そこまで高望みはするまいと思う。持ち味である柔らかい発声に、西洋音楽っぽいクサイ民謡編曲が打って付け。男声合唱ではサウンドの追求の前提にあって、そこから音楽の始まると再認識させられた。

県立郡山高校(女声32名)
指揮/菅野正美
ピアノ/鈴木あずさ
土田豊貴「けれども大地は…」(夢のうちそと)
鈴木輝昭「会う-手紙-川」(女に第2集)
 課題曲に柔らかな情感を生かす美しいハーモニーはあるが、ソプラノの声のポジションの決まらず、指揮者の曲の整理も今ひとつで完成度は低い。自由曲はソプラノにクッキリとした明確な響きの無く、アルトとの対比が際立たない。優し気なニュアンスは指揮者の持ち味だが、曲を通してあるべき色彩感に乏しいのは物足りない。

<決定順位>
1.安積黎明女声 2.安積混声 3.会津 4.橘 5.喜多方 6.会津学鳳 7.郡山女子大附属 8.郡山女声 9.福島 10.郡山東女声 11.磐城 12.葵 13.郡山混声 14.安積女声 15.福島東 16.郡山東混声(以上東北大会代表)17.安積男声 18.湯本 19.田村 20.桜の聖母学院 21.いわき光洋 22.いわき総合

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