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Channel: オペラの夜
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日本センチュリー交響楽団第171回定期演奏会

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2012年5月24日(木)19:00/ザ・シンフォニーホール

指揮/沼尻竜典
メゾ・ソプラノ/ラヘル・フレンケル
日本センチュリー交響楽団

ドヴォルザーク「スラヴ・ラプソディ第2番 op.45-2/交響曲第4番 op.13」
マーラー「リュッケルトの詩による五つの歌曲」
1.Ich atmet' einen linden Duft 仄かな香りを
2.Blicke mir nicht in die Lieder! 僕の歌を覗き込まないで
3.Liebst du um Schonheit 美しさ故に愛するなら
4.Um Mitternacht 真夜中に
5.Ich bin der Welt abhanden gekommen 私は世に忘れられ


 大阪改め日本センチュリー響の定期には、音楽監督の小泉和裕が日常的なプログラムを淡々とこなし、客演首席の沼尻はメンデルスゾーン「讃歌」や、オネゲル「ジャンヌ・ダルク」等の声楽入り大曲に取り組む、役割分担のあるように思う。それが今回、四月の小泉が「カルミナ・ブラーナ」と派手目だったのを承け、沼尻は地味な演目に回った。冒頭にラプソディー、メインにシンフォニーのドヴォルザーク二曲で、マーラーの歌曲を挟むプログラム構成。

 スラヴ・ダンスなら知っていても、ラプソディなんて知らないぞと云う訳で、これは初めて聴く曲。さすがにラプソディを謳うだけあって、何だか構成の頭に入り難い曲だなぁとか、思ってる内に終っちゃう印象。それでも沼尻は堅実な手付きで、クライマックスに向け盛り上げる。それと、さすがにセンチュリーの弦は上手で、速いパッセージもピタリと揃え、稽古量も充分の様子だった。

 マーラーのソリストは当年取って32歳、イスラエル出身の若いお嬢さん。とても綺麗な声で美しいマーラーを歌ってくれたが、声量は左程に無いので、オケのフォルテシモの音量には埋もれてしまう。ダイナミク・レンジの狭くて劇的な要素に欠けるのと、低音で響きの痩せるのもやや物足りなく感じる。でも、プログラム記載の経歴は、バレンボイムやティーレマンの指揮で、「影のない女」や「ナクソス島のアリアドネ」のメゾ主役を歌う立派なもので、今回はセーヴ気味なだけだったのかも知れない。最後の曲のピアノ・ピアニシモの極小音量を弾き切る、弦の合奏力は見事だったが、ここはもう少しデュナーミクの起伏も欲しい処。指揮者の毒の吐き方も物足りず、マーラーにしてはポジティヴに過ぎる演奏で、オケにも歌手と共に唱う姿勢が望まれる。

 休憩後はドヴォルザークに戻ってシンフォニー。勿論、ドヴォルザークに九つの交響曲のあるのは知っているが、普通に取り上げられるのは、七番以降の三曲だけだろうと思うし、僕もそれしか聴いた事はない。四番とはレア物も良い処で、そこに沼尻の思い入れを感じるべきなのだろうか。

 アレグロの第一楽章は、この曲ホントに楽しそうと思わせる、如何にもシンフォニーらしい序章。続くユーモラスなアンダンテでも、楽しそうな旋律の賑やかに展開して、とてもドヴォルザークらしく感じる。お祭り騒ぎのスケルツォを経て、シンフォニーは終楽章へと至り、愉快且つ豪快なフィナーレへと雪崩れ込む。沼尻は曲に没入しても騒々しくはせず、メンデルスゾーンを好きな人らしく、明るい音楽作りが手柄となった。

 こんな曲を気難しく考える必要は無く、気軽に楽しく聴ければそれで良いのだろう。でも、定期会員として一年を通し、センチュリーのコンサートに通うのであれば、このプログラミングの妙を楽しむ余裕もあるだろうが、僕のような偶にしか来ないフリの聴衆には、これはレアに過ぎる選曲だった。毎月のオケ定期を楽しみに通う、そんな境地から随分と離れてしまったのだなぁと、シミジミ感じる今日この頃である。

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