2012年9月28日(金)9:40/郡山市民文化センター
昨年3月11日、郡山市民文化センターは震災被害で休館。予定されていたコンクールは行えず、大会は盛岡で代替開催された。この三月、漸く再開に漕ぎ着けた郡山市民文化センターで、今日は一年遅れの東北大会が行われる。例によって貧乏暇無しの僕は当日の朝、夜行バスで郡山入りした。ここに来て初めて知ったのだが、今日は安積国造神社の秋祭りの日らしい。早朝の駅前大通りを歩くと、歩道に沢山の夜店が出ていて、準備万端を整えている様子だった。僕は人混みが嫌いで、どちらかと云えばお祭りを好まない。でも、今日はコンクールからの帰途、暗い夜道をトボトボ歩いていると、前方に明るく提燈を灯した山車が見え、お囃子の音も聴こえて来た。このまま一泊もせず、僕は夜行バスでトンボ帰りするが、こんなに風情のあるお祭りなら、ゆっくり雰囲気を味わっても良かったかなと、少し後悔した。
<岩手県>
県立一関第一高校・附属中学音楽部(混声83名)
指揮/横山泉
ハウエルズ「Sing Lullaby 子守唄を歌い」
Paul Mealor:Upon a bank with roses set about/A spotless rose
ハウエルズでは対位法的な部分をクッキリ聴かせて、曲の山場を的確に捉えている。曲想の転換部での切り替えも、レガートなフレージングも良く出来ていた。自由曲は全体を大掴みにした上で細部に拘る、リズムの扱いが素晴らしく音楽的。深く底鳴りするようなシンフォニックなハーモニーで、分厚いピアニシモを美しく響かせるので、フォルテの祈りの歌も生かされる。これは一期一会の名演だったと思う。
県立一関第二高校音楽部(女声35名)
指揮/獅子内綾菜
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
松下耕「Ave Maria/Ave regina coelorum」
リズムを際立たせない、柔らかいマドリガルの演奏。自由曲でピアニシモのハーモニーは美しいが、芯の無い声はやや頼りなく、音楽作りも平坦になって終う。リズムの扱いは柔らかく、明るい音色の使い方も上手だが、緩徐部分にもう一工夫の欲しい処だ。
県立盛岡第一高校(混声42名)
指揮/杉本聖房
ハウエルズ「Sing Lullaby 子守唄を歌い」
ヒンデミット「Gloria」(Masse)
ハウエルズには抑えたピアニシモに、艶消しの美しいハーモニーがあり、遅目のテンポを上手に聴かせた。どの学校も英語に聞こえない中、ここは上手にやった方と思う。ヒンデミットは高校生らしい、普通の良さのある演奏。ただ、曲の内容に乏しい為、演奏の真意も伝わらない気味はあった。
県立高田高校音楽部(女声23名)
指揮/山崎歌子
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
Henrik Colding-Jorgensen:Osanna!
ニーステッド「I am my brother's keeper」
ウィールクスはマドリガルらしく、軽やかに歌えた。自由曲でメンバーが半円一列に並んだのは、音像に広がりを出す効果がある。少人数による爽やかな演奏で、音色の変化と自在なテンポで聴かせてくれた。
盛岡白百合学園高校(女声14名)
指揮/大金光地昌江
瑞慶覧尚子「無門」(約束)
Josef Wolfgang Ziegler:Kyrie/Gloria〜Missa pro juventute
課題曲は柔らかいアルトに支えられ、暖かい音色のあるピアニシモで押し通す。自由曲は最後まで美しい音色を崩さず、精一杯のフォルテも使い、自分達の出来る範囲で工夫された音楽作りがある。ただ、もう少し取り組み甲斐のある曲をやって欲しい、とは思う。
県立盛岡第四高校音楽部(女声31名)
指揮/佐藤ふみ子
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
鈴木輝昭「The hole あな/A dream of four brothars ゆめのよる/Two guys ふたり」(Five songs of nonsense)
今日のウィールクスで中間部を遅くする、同じような解釈の度々出て来るが、これは同じテンポで通すべき曲と思う。自由曲では最初から最後まで力んでいて、テンションを緩める事をしない。曲想の明暗の切り替わる部分を、無理にでも探して変化を付けたい。しかし実際の話、わざわざ谷川俊太郎の英訳詩へ曲を付すとは、輝やんもケッタイな事をする人と思う。
県立不来方高校音楽部(混声32名)
指揮/村松玲子
パレストリーナ「Ego sum panis vivus 私は生けるパンである」
リゲティ「Magany 孤独/Haj,if jusag! おお、若さよ」
パレストリーナは速目のテンポで、各パートの頭は聴こえても、その後はハーモニーに溺れ気味。リゲティにこんなマドリガルっぽいフツーの曲のあるのを、僕は初めて知った。ピアニシモのロング・トーンで張り詰めたテンションを保つ、声楽的な能力は高く、マジャール語の抑揚に合わせたデュナーミクの作り方も巧い。遅い・速いの二曲の対比も良く出来たが、声自体の輝きに乏しいのを、やや物足りなく感じる。
県立盛岡第二高校音楽部(女声20名)
指揮/小濱和子
瑞慶覧尚子「無門」(約束)
Siegfried Strohbach:Ave Regina coelorum
課題曲は先生のおおらかな指揮で、ユッタリした音楽が心地良い。自由曲も頭声の美しい響きのあるハーモニーで、あくまでレガートに一切の無理押しをせず、フレーズを柔らかく歌い納める優しい音楽作りがある。音色とテンポの変化も、それなりに効果的だった。
県立水沢高校音楽部(女声30名)
指揮/中村桂子
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
Ola Gjeilo:Ubi caritas/Prelude
三十名の声は纏まらず大味な演奏だが、今日のウィールクスの中で、ここの解釈は最も真っ当と思う。自由曲では急に声の纏まって、頭声の良さを生かしたが、最後の曲だけ混声だったのに、僕はやや途惑った。
<決定順位>
1.橘 2.不来方 3.会津 4.安積 5.安積黎明 6.郡山(以上代表) 7.仙台三桜 8.郡女附属 9.聖ウルスラ 9.盛岡四 11.福島東 12.会津学鳳 13.葵 13.盛岡二 15.福島 16.水沢 17.一関一 18.喜多方 19.盛岡一 20.磐城 21.郡山東 22.鶴岡北 23.鶴岡南 24.八戸東 25.山形西 26.湯本 27.青森 27.仙台南 29.一関二
昨年3月11日、郡山市民文化センターは震災被害で休館。予定されていたコンクールは行えず、大会は盛岡で代替開催された。この三月、漸く再開に漕ぎ着けた郡山市民文化センターで、今日は一年遅れの東北大会が行われる。例によって貧乏暇無しの僕は当日の朝、夜行バスで郡山入りした。ここに来て初めて知ったのだが、今日は安積国造神社の秋祭りの日らしい。早朝の駅前大通りを歩くと、歩道に沢山の夜店が出ていて、準備万端を整えている様子だった。僕は人混みが嫌いで、どちらかと云えばお祭りを好まない。でも、今日はコンクールからの帰途、暗い夜道をトボトボ歩いていると、前方に明るく提燈を灯した山車が見え、お囃子の音も聴こえて来た。このまま一泊もせず、僕は夜行バスでトンボ帰りするが、こんなに風情のあるお祭りなら、ゆっくり雰囲気を味わっても良かったかなと、少し後悔した。
<岩手県>
県立一関第一高校・附属中学音楽部(混声83名)
指揮/横山泉
ハウエルズ「Sing Lullaby 子守唄を歌い」
Paul Mealor:Upon a bank with roses set about/A spotless rose
ハウエルズでは対位法的な部分をクッキリ聴かせて、曲の山場を的確に捉えている。曲想の転換部での切り替えも、レガートなフレージングも良く出来ていた。自由曲は全体を大掴みにした上で細部に拘る、リズムの扱いが素晴らしく音楽的。深く底鳴りするようなシンフォニックなハーモニーで、分厚いピアニシモを美しく響かせるので、フォルテの祈りの歌も生かされる。これは一期一会の名演だったと思う。
県立一関第二高校音楽部(女声35名)
指揮/獅子内綾菜
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
松下耕「Ave Maria/Ave regina coelorum」
リズムを際立たせない、柔らかいマドリガルの演奏。自由曲でピアニシモのハーモニーは美しいが、芯の無い声はやや頼りなく、音楽作りも平坦になって終う。リズムの扱いは柔らかく、明るい音色の使い方も上手だが、緩徐部分にもう一工夫の欲しい処だ。
県立盛岡第一高校(混声42名)
指揮/杉本聖房
ハウエルズ「Sing Lullaby 子守唄を歌い」
ヒンデミット「Gloria」(Masse)
ハウエルズには抑えたピアニシモに、艶消しの美しいハーモニーがあり、遅目のテンポを上手に聴かせた。どの学校も英語に聞こえない中、ここは上手にやった方と思う。ヒンデミットは高校生らしい、普通の良さのある演奏。ただ、曲の内容に乏しい為、演奏の真意も伝わらない気味はあった。
県立高田高校音楽部(女声23名)
指揮/山崎歌子
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
Henrik Colding-Jorgensen:Osanna!
ニーステッド「I am my brother's keeper」
ウィールクスはマドリガルらしく、軽やかに歌えた。自由曲でメンバーが半円一列に並んだのは、音像に広がりを出す効果がある。少人数による爽やかな演奏で、音色の変化と自在なテンポで聴かせてくれた。
盛岡白百合学園高校(女声14名)
指揮/大金光地昌江
瑞慶覧尚子「無門」(約束)
Josef Wolfgang Ziegler:Kyrie/Gloria〜Missa pro juventute
課題曲は柔らかいアルトに支えられ、暖かい音色のあるピアニシモで押し通す。自由曲は最後まで美しい音色を崩さず、精一杯のフォルテも使い、自分達の出来る範囲で工夫された音楽作りがある。ただ、もう少し取り組み甲斐のある曲をやって欲しい、とは思う。
県立盛岡第四高校音楽部(女声31名)
指揮/佐藤ふみ子
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
鈴木輝昭「The hole あな/A dream of four brothars ゆめのよる/Two guys ふたり」(Five songs of nonsense)
今日のウィールクスで中間部を遅くする、同じような解釈の度々出て来るが、これは同じテンポで通すべき曲と思う。自由曲では最初から最後まで力んでいて、テンションを緩める事をしない。曲想の明暗の切り替わる部分を、無理にでも探して変化を付けたい。しかし実際の話、わざわざ谷川俊太郎の英訳詩へ曲を付すとは、輝やんもケッタイな事をする人と思う。
県立不来方高校音楽部(混声32名)
指揮/村松玲子
パレストリーナ「Ego sum panis vivus 私は生けるパンである」
リゲティ「Magany 孤独/Haj,if jusag! おお、若さよ」
パレストリーナは速目のテンポで、各パートの頭は聴こえても、その後はハーモニーに溺れ気味。リゲティにこんなマドリガルっぽいフツーの曲のあるのを、僕は初めて知った。ピアニシモのロング・トーンで張り詰めたテンションを保つ、声楽的な能力は高く、マジャール語の抑揚に合わせたデュナーミクの作り方も巧い。遅い・速いの二曲の対比も良く出来たが、声自体の輝きに乏しいのを、やや物足りなく感じる。
県立盛岡第二高校音楽部(女声20名)
指揮/小濱和子
瑞慶覧尚子「無門」(約束)
Siegfried Strohbach:Ave Regina coelorum
課題曲は先生のおおらかな指揮で、ユッタリした音楽が心地良い。自由曲も頭声の美しい響きのあるハーモニーで、あくまでレガートに一切の無理押しをせず、フレーズを柔らかく歌い納める優しい音楽作りがある。音色とテンポの変化も、それなりに効果的だった。
県立水沢高校音楽部(女声30名)
指揮/中村桂子
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
Ola Gjeilo:Ubi caritas/Prelude
三十名の声は纏まらず大味な演奏だが、今日のウィールクスの中で、ここの解釈は最も真っ当と思う。自由曲では急に声の纏まって、頭声の良さを生かしたが、最後の曲だけ混声だったのに、僕はやや途惑った。
<決定順位>
1.橘 2.不来方 3.会津 4.安積 5.安積黎明 6.郡山(以上代表) 7.仙台三桜 8.郡女附属 9.聖ウルスラ 9.盛岡四 11.福島東 12.会津学鳳 13.葵 13.盛岡二 15.福島 16.水沢 17.一関一 18.喜多方 19.盛岡一 20.磐城 21.郡山東 22.鶴岡北 23.鶴岡南 24.八戸東 25.山形西 26.湯本 27.青森 27.仙台南 29.一関二