2012年10月27日(土)9:50/鹿児島市民文化ホール
石川県立金沢二水高校合唱部(混声60名)
指揮/深見納
ピアノ/山岸茂人
林光「鳥のように栗鼠のように」(無声慟哭)
高嶋みどり「宇宙」
ピアニシモで坦々と進めながら、唐突に盛り上げたりするのは、この課題曲の解釈として如何なものかと思う。どうせならば、最後までピアニシモで通して欲しかった。自由曲も林光と同じ解釈で、センシティヴなピアニシモを主体に進める。但し、こちらは一直線に盛り上げずに、緩急を付けながらクライマックスへ持って行く、曲全体を俯瞰した設計がキチンと出来ている。同じ曲を取り上げた宮崎学園と、真逆の解釈なのも面白かった。
愛知県立岡崎高校コーラス部(混声78名)
指揮/近藤惠子
林光「鳥のように栗鼠のように」(無声慟哭)
Eric Whitacre:Her sacred spirit soars
この大人数で、しかも深々とした声に合う課題曲では無いが、適切なデュナーミクの工夫があり言葉を良く聴き取れて、これは林光を歌う際に重要と思う。自由曲はこの作曲者にしては珍しく、マジメな意図のある曲。演奏はバスの充実してピアニシモに深い響きがあり、対位法的な処理も上手に出来て、ドッペル・コールで額面通りの効果を揚げる。祈りの心に満ちたテンペラメントに溢れ、感動的に歌い上げてくれた。
聖カタリナ学園光ケ丘女子高校合唱部(愛知県・女声76名)
指揮/雨森文也
ピアノ/白鳥清子
新実徳英「天使」(やさしい魚)
三善晃「ゆめ」(オデコのこいつ)
新実の解釈は平凡で左程にスィングもせず、指揮のアクションの大きい割りに音楽は動かない。「ゆめ」には振幅の大きなアゴーギグがあり、アチェルラントを多用する演奏。但し、小手先の工夫に走り過ぎで、全ては表面的な意図に留まり、曲の内奥にある恐怖心を引き出せていない。恐らくは音楽性豊かな指揮者と思うが、それは殆んど演奏に現れていない。アルトに平気で、汚い声を出させるのにも閉口した。
愛知高校合唱部(女声32名)
指揮/吉田稔
瑞慶覧尚子「無門」(約束)
ユッカ・カンカイネン「Haukkani 鷹が飛ぶ/Ilta 夕暮れ/Elstaasi エクスタシー」
課題曲に美しいハーモニーはあるが、細部に拘ってテンポを粘って終うので、もっと曲を大掴みにして表現したい。自由曲も美しく整えたが、北欧の曲にしてはアルトを効かせた濃厚な演奏に過ぎるし、アドリブの要素に乏しいのも辛い。指揮者が歌う側の息遣いを仕切り過ぎる、最初に決めた通りの型に嵌めた演奏で、もう少し生徒さんの自由に歌わせて上げたかった。
関西学院高等部グリークラブ(兵庫県・男声32名)
指揮/安川佳秀
松下耕「はらへたまってゆくかなしみ」(秋の瞳)
北川昇「宇宙の中を/泳ぐ」
課題曲は遅いテンポで流して、メリハリが付き難い。ピアニシモの美しいのは評価したいが、もっとピッチを高目に取る為にも喉声を修正し、頭声を身に付ける必要はある。自由曲も気持ち良くハモれているが、只それだけ。二曲ともテンポが遅いので、アチェルラントを意識し、畳み掛ける局面を作りたい。清潔なフレージングは良いが、喉声は最後まで変わらなかった。
武庫川女子大附属高校コーラス部(兵庫県・女声72名)
指揮/岡本尚子
ピアノ/市川麻里子
新実徳英「天使」(やさしい魚)
鈴木輝昭「運命」(譚詩頌五花)
新実にはセンシティヴで柔らかい情感のあり、中間部のヴォーカリーズでのフォルテシモも効果的だったが、最後のフェルマータが長過ぎて途切れて終ったのは、やや残念に感じる。自由曲も暖かいニュアンスに富んだ演奏で、ドッペル・コールを歌い切る技術力も高い。ただ、充分な迫力はあるが太い声で、音色も変わらず単調になって終う。その辺りを補う為にも、もう少しリズムに軽やかさの欲しい処だ。
兵庫県立長田高校音楽部(混声63名)
指揮/合田芳弘
ピアノ/由井敦子
林光「鳥のように栗鼠のように」(無声慟哭)
高嶋みどり「落下傘」(感傷的な二つの奏鳴曲)
女声の後ろに回しても、テノールからは客席までクッキリと生の声が聴こえて来る。課題曲はテンポが遅く、デュナーミクの工夫も無くて平坦な演奏。「落下傘」でもテノールの生な声が目立ち、女声に明快な音色が無いので、この曲に求められる効果は得られない。微かにアゴーギグを揺らせる指揮者のセンスは良いが、曲想が転換しても音色は変わらず単調になって終うので、もっと音色のパレットを多彩にして欲しい。
岡山県立岡山城東高校合唱部(混声61名)
指揮/森野啓司
ハウエルズ「Sing Lullaby 子守唄を歌え」
三善晃「私が歌う理由(地球へのバラード)/願い−少女のプラカード(五つの願い)」
指揮者は長いタクトを振り回すが、ハウエルズで縦は揃っておらず、雑然とした印象を受ける。「私が歌う理由」ではキチンと縦も揃い、即興的なアゴーギグの揺れも効果的で、この曲らしいニュアンスが出て来る。声のテクニック自体は決して高くないが、最後のピアニシモもしっかりと歌えた。「願い」のようなテンポの遅い曲だと、この指揮者はデュナーミクの工夫が得意な人と良く分かる。また、随分とピアニシモに拘る人で、生徒は力量を超えたものを要求されながら、その要請に良く応えていた。
出雲北陵高校合唱部(島根県・女声32名)
指揮/米山辰郎
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
鈴木輝昭「旅/かぶき者」(わたしは阿国)
ウィールクスにマドリガルらしいテンポ感はあるが、頭声よりも低めに響く声は、全く時代様式から外れている。各声部は分離せず、塊にしか聴こえない。自由曲でも各パートにクッキリとした音色の差は無く、対位法的な部分で団子になって終い、聴いていて全く面白くない。指揮者の解釈も終始ベタ押しで、二曲の対照性も無かった。
山口県立萩高校合唱部(混声55名)
指揮/有富美子
ピアノ/藤村早希子
林光「鳥のように栗鼠のように」(無声慟哭)
鈴木輝昭「愛」(もうひとつのかお)
林光でデュナーミクの工夫を絡ませながら、一つひとつの音の軽重を見極める、指揮者の手腕で心地良く音楽を進める。自由曲も言葉を大切に扱う情感のある演奏だが、音色の変化しないのを残念に思う。高音部でのソプラノの絶叫も気になるが、指揮者に曲への共感のあるので、まずまず楽しく聴けた。鈴木の曲は三善晃の模倣として、出来映えは良い方と思う。
石川県立金沢二水高校合唱部(混声60名)
指揮/深見納
ピアノ/山岸茂人
林光「鳥のように栗鼠のように」(無声慟哭)
高嶋みどり「宇宙」
ピアニシモで坦々と進めながら、唐突に盛り上げたりするのは、この課題曲の解釈として如何なものかと思う。どうせならば、最後までピアニシモで通して欲しかった。自由曲も林光と同じ解釈で、センシティヴなピアニシモを主体に進める。但し、こちらは一直線に盛り上げずに、緩急を付けながらクライマックスへ持って行く、曲全体を俯瞰した設計がキチンと出来ている。同じ曲を取り上げた宮崎学園と、真逆の解釈なのも面白かった。
愛知県立岡崎高校コーラス部(混声78名)
指揮/近藤惠子
林光「鳥のように栗鼠のように」(無声慟哭)
Eric Whitacre:Her sacred spirit soars
この大人数で、しかも深々とした声に合う課題曲では無いが、適切なデュナーミクの工夫があり言葉を良く聴き取れて、これは林光を歌う際に重要と思う。自由曲はこの作曲者にしては珍しく、マジメな意図のある曲。演奏はバスの充実してピアニシモに深い響きがあり、対位法的な処理も上手に出来て、ドッペル・コールで額面通りの効果を揚げる。祈りの心に満ちたテンペラメントに溢れ、感動的に歌い上げてくれた。
聖カタリナ学園光ケ丘女子高校合唱部(愛知県・女声76名)
指揮/雨森文也
ピアノ/白鳥清子
新実徳英「天使」(やさしい魚)
三善晃「ゆめ」(オデコのこいつ)
新実の解釈は平凡で左程にスィングもせず、指揮のアクションの大きい割りに音楽は動かない。「ゆめ」には振幅の大きなアゴーギグがあり、アチェルラントを多用する演奏。但し、小手先の工夫に走り過ぎで、全ては表面的な意図に留まり、曲の内奥にある恐怖心を引き出せていない。恐らくは音楽性豊かな指揮者と思うが、それは殆んど演奏に現れていない。アルトに平気で、汚い声を出させるのにも閉口した。
愛知高校合唱部(女声32名)
指揮/吉田稔
瑞慶覧尚子「無門」(約束)
ユッカ・カンカイネン「Haukkani 鷹が飛ぶ/Ilta 夕暮れ/Elstaasi エクスタシー」
課題曲に美しいハーモニーはあるが、細部に拘ってテンポを粘って終うので、もっと曲を大掴みにして表現したい。自由曲も美しく整えたが、北欧の曲にしてはアルトを効かせた濃厚な演奏に過ぎるし、アドリブの要素に乏しいのも辛い。指揮者が歌う側の息遣いを仕切り過ぎる、最初に決めた通りの型に嵌めた演奏で、もう少し生徒さんの自由に歌わせて上げたかった。
関西学院高等部グリークラブ(兵庫県・男声32名)
指揮/安川佳秀
松下耕「はらへたまってゆくかなしみ」(秋の瞳)
北川昇「宇宙の中を/泳ぐ」
課題曲は遅いテンポで流して、メリハリが付き難い。ピアニシモの美しいのは評価したいが、もっとピッチを高目に取る為にも喉声を修正し、頭声を身に付ける必要はある。自由曲も気持ち良くハモれているが、只それだけ。二曲ともテンポが遅いので、アチェルラントを意識し、畳み掛ける局面を作りたい。清潔なフレージングは良いが、喉声は最後まで変わらなかった。
武庫川女子大附属高校コーラス部(兵庫県・女声72名)
指揮/岡本尚子
ピアノ/市川麻里子
新実徳英「天使」(やさしい魚)
鈴木輝昭「運命」(譚詩頌五花)
新実にはセンシティヴで柔らかい情感のあり、中間部のヴォーカリーズでのフォルテシモも効果的だったが、最後のフェルマータが長過ぎて途切れて終ったのは、やや残念に感じる。自由曲も暖かいニュアンスに富んだ演奏で、ドッペル・コールを歌い切る技術力も高い。ただ、充分な迫力はあるが太い声で、音色も変わらず単調になって終う。その辺りを補う為にも、もう少しリズムに軽やかさの欲しい処だ。
兵庫県立長田高校音楽部(混声63名)
指揮/合田芳弘
ピアノ/由井敦子
林光「鳥のように栗鼠のように」(無声慟哭)
高嶋みどり「落下傘」(感傷的な二つの奏鳴曲)
女声の後ろに回しても、テノールからは客席までクッキリと生の声が聴こえて来る。課題曲はテンポが遅く、デュナーミクの工夫も無くて平坦な演奏。「落下傘」でもテノールの生な声が目立ち、女声に明快な音色が無いので、この曲に求められる効果は得られない。微かにアゴーギグを揺らせる指揮者のセンスは良いが、曲想が転換しても音色は変わらず単調になって終うので、もっと音色のパレットを多彩にして欲しい。
岡山県立岡山城東高校合唱部(混声61名)
指揮/森野啓司
ハウエルズ「Sing Lullaby 子守唄を歌え」
三善晃「私が歌う理由(地球へのバラード)/願い−少女のプラカード(五つの願い)」
指揮者は長いタクトを振り回すが、ハウエルズで縦は揃っておらず、雑然とした印象を受ける。「私が歌う理由」ではキチンと縦も揃い、即興的なアゴーギグの揺れも効果的で、この曲らしいニュアンスが出て来る。声のテクニック自体は決して高くないが、最後のピアニシモもしっかりと歌えた。「願い」のようなテンポの遅い曲だと、この指揮者はデュナーミクの工夫が得意な人と良く分かる。また、随分とピアニシモに拘る人で、生徒は力量を超えたものを要求されながら、その要請に良く応えていた。
出雲北陵高校合唱部(島根県・女声32名)
指揮/米山辰郎
ウィールクス「In black mourn I 喪服で弔い」
鈴木輝昭「旅/かぶき者」(わたしは阿国)
ウィールクスにマドリガルらしいテンポ感はあるが、頭声よりも低めに響く声は、全く時代様式から外れている。各声部は分離せず、塊にしか聴こえない。自由曲でも各パートにクッキリとした音色の差は無く、対位法的な部分で団子になって終い、聴いていて全く面白くない。指揮者の解釈も終始ベタ押しで、二曲の対照性も無かった。
山口県立萩高校合唱部(混声55名)
指揮/有富美子
ピアノ/藤村早希子
林光「鳥のように栗鼠のように」(無声慟哭)
鈴木輝昭「愛」(もうひとつのかお)
林光でデュナーミクの工夫を絡ませながら、一つひとつの音の軽重を見極める、指揮者の手腕で心地良く音楽を進める。自由曲も言葉を大切に扱う情感のある演奏だが、音色の変化しないのを残念に思う。高音部でのソプラノの絶叫も気になるが、指揮者に曲への共感のあるので、まずまず楽しく聴けた。鈴木の曲は三善晃の模倣として、出来映えは良い方と思う。