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第65回福島県合唱コンクール

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2011年8月26日(金)9:30/会津風雅堂

<浜通り>
県立相馬東高校(女声15名)
指揮/星有起
ピアノ/条裕子
ガルッピ「Judicabit in nationibus 主は諸国を裁き」(詩篇110番)
ヨーゼフ・カライ「Ave Maria/Hodie Christus natus est」
 ガルッピのハイドンみたいに物々しい前奏から、とんでもなく可愛らしいボーイ・ソプラノみたいな声の出て来て、でもバロック様式はキチンと把握しているのに、悪いけれど笑って終う。カライはノン・ヴィブラートの真っ直ぐな発声で情感の揺れず、実はこちらの方が音楽的に、ややミス・マッチだったかも知れない。

県立磐城桜が丘高校(女声25名)
指揮/長谷川桜
スヴェーリンク「Lascia Filli mia cara 愛するフィリスよ」
Stephen Hatfield:Gloria〜Missa Brevis
 キチンとしたメリスマの技術があって、時代様式の理解度は高いが、ややテンポの遅目なのと、可愛らしい声に過ぎるスヴェーリンク。自由曲には作曲者の軽薄な意図が露骨で、著しく底の浅い曲。演奏そのものはキビキビしたリズムの処理が的確、清潔なフレージングのあって、しっかりしたテンポ感を保持する中での、アゴーギグの工夫も音楽的。ピアニシモに力のある声なので、もう少し頑張ってフォルテも出して欲しかった。

県立磐城高校(混声45名)
指揮/赤城佳奈
高嶋みどり「父の唄」(若者たちの悲歌)
千原英喜「鬼女」(コスミック・エレジー)
 曲に対して適切な情感のあり、フォルテを歌い切る声の力もある、キチンと縦を揃えた端正な課題曲。但し、聴き手に個性を印象付ける、閃きに乏しいと感じる。自由曲も似たような感想で、これ見よがしなコケ脅しで構成する曲を、充分な迫力を持って表現出来る、とても力のある合唱団と思う。その限りに於いては良い演奏だが、僕はこのテのコーラスは苦手で、熱演すればする程に曲の弱さを露呈するように思う。

県立いわき総合高校(女声12名)
指揮/渡邉貴紀
スヴェーリンク「Lascia Filli mia cara 愛するフィリスよ」
Reijo Kekkonen:Gloria
 スヴェーリンクは早目のテンポ設定で、マドリガーレらしい爽快感がある。自由曲は何だか良く分からない曲で、指揮者と生徒さん達から、その内容を伝えようとする意図は感じるが、それでも矢張り訳の分からん曲と思う。

県立いわき光洋高校(女声8名)
指揮/大塚悦子
スヴェーリンク「Lascia Filli mia cara 愛するフィリスよ」
Peter Eben:Madchen schwalbe/Warst du von hause
/Kuckuck/Schon fliegt die schwalbe
 この合唱団のスヴェーリンクの演奏は、曲に内在する意味を明示していて、今日初めて納得出来るテンポ設定だった。エベンでも曲の要求するリズムを、正確に把握して指示する顧問教諭と、それにキチンと応える八名の生徒の理解度は高い。少人数の良さを存分に発揮する、音楽的な内容の豊富な演奏だった。

県立湯本高校(女声22名)
指揮/佐藤留美
スヴェーリンク「Lascia Filli mia cara 愛するフィリスよ」
鈴木輝昭「筑波嶺のみねより落つるみなの川」(恋歌秘抄)
 スヴェーリンクはソプラノの頭声が完璧で、中庸のテンポと柔らかいハーモニーのあり、時代様式を把握したリズム感を持って歌えている。鈴木では対位法的な処理の上手に出来ているし、アーティキュレーションの作り方も適確で、不協和なハーモニーを柔らかく響かせるが、音色の変化に乏しい為に地味な印象を与えて終う。この指揮者と合唱団は、この曲以外の曲に適性のある、音楽性と声を持っているように思う。

<会津>
県立葵高校(女声51名)
指揮/瓶子美穂子
ピアノ/山内直美
土田豊貴「けれども大地は…」(夢のうちそと)
鈴木輝昭「手枕の袖」(和泉式部日記より)
 課題曲の対位法的な構造を把握して、内容に合わせた音色の変化が的確。細くスピントするソプラノのピアニシモが美しく、それを支えるアルトも充実している。鈴木への委嘱曲では清潔なリズムの運びの中に、効果的なアチェルラントの用法のあり、聴き手の意表を突く曲作りがあった。この指揮者にはポリフォニックな曲の、ハーモニーの推移に対する鋭敏なセンスがあると思う。

県立会津高校(混声71名)
指揮/山ノ内幸江
松本望「やわらかいいのち」(あなたへ)
ラインベルガー「Credo」(ミサ変ホ長調 op.109)
 指揮者に巨視的な音楽の捉え方があり、広いダイナミク・レンジを駆使して、課題曲をシンフォニックに鳴らせる。でも、そこまでする程の内容のある曲とも思えず、少し行き過ぎのようにも感じる。ドッペル・コールのクレドでは、指揮者のアゴーギグの揺らせ方が抜群に上手い。高校生離れした重厚なバスの支える豊麗な響きがあり、アチェルラントとクレシェンドを連動させる、正攻法のロマンティックな音楽作りで、これも堂々たる演奏だった。

県立喜多方高校(混声59名)
指揮/高橋祐二
高嶋みどり「父の唄」(若者たちの悲歌)
鈴木輝昭「いまはむかし」(竹取物語頌)
 遅目のテンポの中でニュアンスに富んだ演奏を繰り広げる、指揮者の内容豊富な音楽作りに満腹する。ただ、縦の線のピッタリと揃わず、やや雑然とした印象となるのは惜しい。自由曲も遅いテンポでタップリ聴かせてくれるが、ソプラノの内声的な音色がアルトとの対比の際立たず、同じようなテンションの続いて、平たく云えば退屈する。パート内部のピッチの揃わず、曲想に合わせた音色の変化の無いのも、単調に聴こえてしまう要因となる。

会津若松ザベリオ学園高校(女声16名)
指揮/古川聖
小林秀雄「私のいのちは」(五つの心象)
ミクロシュ・コチャール「Salve Regina」
 この課題曲はピッチを正確に取るのが大前提で、そこから色々と工夫する余地の出て来るが、この演奏ではまだそこまで行っていない。コチャールも少人数で致し方のない面はあるが、ずっと音量の一定で表情の変化が無く、指揮者に何かしらの芸の求められる。

県立会津農林高校(混声16名)
指揮/遠藤知美
ヤコブ・ファート「O quam gloriosum est regnum 栄光に輝く王国」
パレストリーナ「Heu mihi,Domine 憩いなき我が心」
アンドレア・ガブリエリ「Angeli archangeli 天使と大天使」
 四拍振りでは音楽の流れないので、指揮者はもっと大きく構えたい。ポリフォニーを並べた意欲は買えるし、生徒も良く頑張ったが、アルシスとテーシスとかも考えて、まずレガートの基本から勉強して欲しい。

県立会津学鳳中学・高校(混声61名)
指揮/佐藤朋子
高嶋みどり「父の唄」(若者たちの悲歌)
Eric Whitacre:Hope,feith,life,Love…/With a lily in your hand
 この指揮者は旋律を歌わせる際の、デュナーミクの付け方が抜群に上手く、またバスの低音に力のあって、課題曲をシンフォニックに鳴らせた。ウィテカーでの指揮者には、フォルテシモで歌おうとする意欲を女声から引き出す、優れたカリスマ性を備えている。音楽作りの土台となるヴォイス・トレーニングの行き届き、不協和なピアニシモのハーモニーが美しく効果的だった。

県立喜多方東高校(混声10名)
指揮/遠藤光子
ピアノ/高橋拓未
ヤコブ・ファート「O quam gloriosum est regnum 栄光に輝く王国」
鈴木憲夫「決意」(未来への決意)
 まず男声の二人しか居ないのに、四声曲を取り上げる勇気を評価したい。一応は形になっているし、それ以上のコメントは失礼に当るように思う。女声も凄く可愛らしい声で、曲を表現しようとする意欲は聴き取れるし、生徒は良くやっているのだが、先生が細かく振り過ぎで、もっと自発性を引き出す姿勢の望まれる。

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